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Kamikaze pilots: the Japanese vs. the American perspective. Psychological Reports, 70, 599-602.

担当者:福島和俊   2002613()

 

Kamikaze pilots:

 
Japanese vs. American perspective

David J. Krus
Arizona State University
 
Yoko Ishigaki
 Japan College of Social Work

 【要約】

第二次世界大戦末期,空襲の激化によって,日本の都市の多くが炎上した。多くの市民が犠牲になったことと,迫り来る本土上陸の危機とによって,日本のパイロットたちは感情的態度・防衛態度を広く共有するようになった。

敵空母を取り巻く集中砲火の壁を突破しようとするとき,日本のパイロットたちは圧倒的な優劣の差に直面した。海上の攻撃目標の防衛網を突破して生還できる確率が小さくなったこと,および日本の軍事力が急速に低下してしまったことから,攻撃目標まで到達できず無駄死にしてしまう確率が大きくなっていった。この時点で,日本のパイロットたちは爆弾を搭載した飛行機に乗り込み,自分たちの死が無駄にならないよう,アメリカの空母めがけて突っ込んだのである。戦後,生き残った日本のパイロットを対象に実施したインタビューで,彼らが特攻を合理的,正当,有意義であると見なしていることが示されている。

対照的に,アメリカ人と現代日本人は,特攻を狂信的,非論理的,不合理であると解釈している。Hasegawa(1984)によると,戦争の時代は“暗黒時代”として払い清められてしまい,戦後世代にとっては“無”なのだという。このHasegawa(1984)の現象論的な観点で,特攻に対する現代日本人とアメリカ人の考えの違いを理解できるだろう。

 方法

質問紙は,特攻パイロットについて記述した両極的形容詞を用いた質問項目から構成されている。

·       アメリカ人被験者:

大学院生37人。

平均年齢36.1(SD=12.4)

人数: 男性>女性。

·       日本人被験者:

大学生90人。

平均年齢19.5(SD=1.4)

人数: 女性>男性。

結果

Table 1: 各平均得点

両極的形容詞

アメリカ人

 

日本人

p

微妙な価値判断

 

 

 

 

 Warm - Cold

 .8

2.3

.001

 Bright - Dark

3.9

5.0

.001

 Beautiful - Ugly

1.3

2.4

.001

 Sweet - Bitter

4.4

5.1

.01

明確な価値判断

 

 

 

 

 Good - Bad

1.4

1.7

ns

 Fair - Unfair

2.5

2.2

ns

 Brave - Cowardly

5.0

4.7

ns

 Meaningful - Meaningless

2.3

2.5

ns

各質問項目について7段階評定で回答してもらった(Table 1)WarmBrightBeautifulSweetGoodFairBraveMeaningfulの各極を7点,ColdDarkUglyBitterBadUnfairCowardlyMeaninglessの各極を1点とした。

平均得点の差の検定で,形容詞対を2つのグループに分類することができる。有意差のあった4対の形容詞は価値の判断が微妙な形容詞であり,有意差のなかった4対の形容詞は価値の判断が明白な形容詞だと言える。

微妙な価値判断の形容詞は,平均得点の差がすべて同じ向きを示していた。日本人被験者は,価値判断が微妙な形容詞の場合においては,よりポジティブに特攻パイロットを記述している。

 考察

結果は,Hasegawa(1984)の現象論的分析による知見を支持するものであった。価値判断の明白な形容詞の得点結果から,現代日本の学生は,アメリカ人以上に,特攻を有意義であるとは見ておらず,「よい」「公正」「勇敢」においても同様である。しかし,価値判断の微妙な形容詞の得点結果から,遠まわしの表現を用いた場合には,最後の出撃の際に「神風」の鉢巻をした若い日本人パイロットの姿を連想して,ポジティブな情動反応を示している。

 【コメント】

現代日本の若者でさえ特攻をポジティブに捉えている可能性を示唆した興味深い論文である。

価値判断が微妙な形容詞においては,現代の日本人は特攻をポジティブに捉えている。一方,価値判断が明白な形容詞においては,アメリカ人に対して有意差は認められなかった。その一因を,Hasegawa(1984)の現象論的分析,すなわち「戦時を暗黒時代として消し去ってしまったため,戦後世代にとって戦時は“無”である」ことに求めている。これは,戦後教育において戦時思想を徹底的に否定してきたことを指すものと思われ,日本人の特攻観の形成に対して確立操作になっていたと考えられる。

ここで,この確立操作がなかったと仮定してみると,価値判断が明白な形容詞の場合においても,微妙な形容詞の場合と同様に,アメリカ人よりも有意に平均点が高くなっていたのかもしれない。なぜなら,この確立操作が微妙な価値判断には影響を及ぼしておらず*1,明白な価値判断にのみ影響を及ぼしているからである。これは,この確立操作のもとで,特攻そのものを“非”と見なす行動が強化されてきたのではなく,特攻を“是”と見なした態度を表明する行動が弱化されたと考えることもできることを示唆したものである。

しかし,この仮説に対する結果は思弁のみによって考察されたものであり,実証性は皆無である。一方,戦時においては,この確立操作が実際に存在しなかったため,実証は可能であろう。もっとも,当時は戦時思想を是とする,まったく正反対の確立操作があったため,本研究の結果以上に特攻をポジティブに捉えた結果が得られるであろうことは容易に想像がつく。当時の人々が特攻をどのように捉えていたのか,また,その捉え方は特攻出撃命令を実際に受けた者(およびその確率の高かった者)と,そうではなかった者とではどのように異なっていたのか,興味は尽きない。

仮に,特攻パイロットにポジティブな価値判断が見られたと仮定した場合,この判断が好子出現をタクトしたルールによって強化されているのか,あるいは嫌子消失をタクトしたルールによって強化されているのかを調査する必要があろう。後者の場合,周囲との調和を保つためや社会的制裁を回避するための“言行不一致”である可能性が否めないためである。これを明らかにすることによって,「特攻をポジティブに捉える」社会的風潮がどのような確立操作になっていたのか特定することが可能となるであろうし,それによって特攻パイロットがどのような随伴性をタクトしたのかの推測が可能になると思われる。

【注釈】

*1: 確立操作は「ある特定の好子や嫌子の,行動の獲得や維持への効果に影響を及ぼす操作」と定義されている(杉山ほか,1998)。したがって,影響を及ぼさない確立操作は確立操作とは言えず,奇妙な表現となっている。ここで言う「この確立操作」とは,Hasegawa(1984)が指摘した現象,ないしは戦時思想を徹底否定した戦後教育を指す代名詞として便宜上用いた表現である。そのため,先のような矛盾は否定される。

【引用文献】

Hasegawa, M. (1984). A postwar view of the Greater East Asia war. Japan Echo, 11, 29-37.

杉山尚子・島宗理・佐藤方哉・マロット・マロット (1998). 行動分析学入門. 産業図書.